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スクスクのびのびと大きくなぁれ! 多摩地域の子どものお祝い行事

 

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子どもが生まれてから成人するまで、日本には古来から、子どもの成長を祈願したり、お祝いしたりするためのさまざまな伝統行事があります。1歳になるまでには、「お七夜」「お宮参り」「お食い初め」「桃の節句」「端午の節句」「一升餅」など、いにしえの時代から続く伝統行事や慣習があり、子どもが無事に成長することが難しかった当時の、わが子の成長を祈る親心がうかがえます。多摩地域でも毎年子どものお祝い行事が開催されています。早速チェックしていきましょう!

神社とお寺、どっちを重視すべき?

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多摩地域のお祝い行事をご紹介する前に、基礎知識のおさらいです。子どもの成長をお祝いするときには、神社かお寺のどちらへ行くべきなのかと迷われたことはありませんか。結論から言うと、どちらへ参拝しても問題ありません。これは、日本は神と仏を調和させ、同一視する「神仏習合(しんふつしゅうごう)」の考えがあるためです。神社を参拝するのであれば、地元の氏神様が祀られている場所が好ましく、お寺はご先祖様とゆかりのある場所を選ぶのがよいでしょう。神社とお寺では参拝の作法が異なるので注意してくださいね。

では、多摩地域の子どもの成長を祝う行事を見ていきましょう。

八王子市最古の神社・子安神社
激しく泣いて健康を祝う「泣き相撲」

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泣き相撲は、氏神さまの前でわが子を大声で泣かせることで、すこやかな成長を祈る行事。400年以上の歴史があります。「泣く子は育つ」ということわざにあるように、大きな声で泣く子どもは元気がある証拠だから丈夫に育つといわれています。土俵の上で1歳前後の赤ちゃんの泣き声を競わせる相撲ですが、基本的には勝敗を付けません。

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安産や育児の神様である「コノハナサクヤヒメ」が祀られている、1250年もの歴史を持つ八王子最古の神社・子安神社で秋分の日に「泣き相撲」が開催されています。参加対象は、生後4ヵ月から1歳半までの赤ちゃん。同じくらいの月齢で分けられ、順番に行われます。力士に抱っこされた赤ちゃんは土俵に横並びとなり、行司さんの声かけで取り組みがスタート。行司さんは赤ちゃんの顔の近くで「はっけよーい、のこった! のこったのこったのこった......」と大声をかけたり、大きな動きやおかしな顔をしたりすることで、赤ちゃんを驚かせて泣かせようとします。会場には泣き声と笑い声とシャッター音が響き渡り、活気ある秋の風物詩となっています。

INFORMATION
子安神社
https://koyasujinja.or.jp/index.html

関東三大本山の一つ・髙尾山薬王院
幼児100人が参加する「髙尾山お稚児パレード」

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お稚児パレードとは、一般的には「稚児行列」と言われ、子どもの無病息災や成長を願う行事です。310歳くらいまでの幼児や子どもが稚児の装束に身を包むことで「お稚児さん」と呼ばれます。御祓いを受けたお稚児さんが並んで練り歩くことで、神様のお恵みをいただこうというもの。稚児行列に3回出ると幸せになれると言われています。

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高尾山の山腹にある髙尾山薬王院で行われている「お稚児パレード」は、毎年4月第3日曜日の髙尾山春季大祭と毎年10月17日の髙尾山秋季大祭の年に2回開催されています。秋季大祭は高尾山にゆかりのある幼稚園児がお稚児さんとして参列します。

春季大祭は一般の方の事前申し込み制で、100名のお稚児さんと付き添いの保護者が参加できます。山伏、職衆、大導師、稚児、付添人など、数百人規模の大行列となり、鮮やかな絵巻物を広げたような華やかさが見もの。高尾山の登山客に挨拶したり記念写真をたくさん撮ったりして、楽しく歩けるでしょう。

INFORMATION
尾山薬王院
https://www.takaosan.or.jp

全国屈指の龍神パワースポット・田無神社
最長5メートルの「鯉のぼり」

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4月から55日の子どもの日まで飾る鯉のぼりは、男の子の誕生と成長を祈願する、鯉の形をしたのぼりです。鯉といえばコイ科の淡水魚ですが、中国では黄河の上流にあるとされる龍門を鯉が登ると龍になるという「登龍門伝説」があり、鯉のぼりを空に泳がせるのは、鯉のようにたくましくわが子にも立身出世をしてほしいという願いが込められています。

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方位学では宇宙は木火土金水の(きひつかみ)の5つの要素で構成されていると考えることを「五行思想」といいます。田無神社では、この思想から5種の龍神が祀られています。中心の本殿には金龍神、東方に青龍神、南方に赤龍神、西方に白龍神、北方に黒龍神が御守護されていて、全国でも屈指のパワースポットと言われています。田無神社の境内には、4月中旬頃から地上高15メートルに檜の竿を使って5匹の巨大な鯉のぼりが飾られています。鯉のぼりのシーズンは5種の龍神に加え、5種の鯉のぼりが境内の中を舞っていると思うと、とてもパワフルですね。この時期は子どもが願いを書いたり色を塗ったりできるミニ鯉のぼりを無料で配布。書いた願いが天に届くように、境内に飾られます。上の画像は2019年の53日〜6日に開催されたイベント会社によるプロデュースの鯉のぼりワークショップで作られた作品です。指や手のひらにインクをつけてペタペタと色付けしながら、オリジナルの鯉のぼりができあがりました。

INFORMATION
田無神社
http://tanashijinja.or.jp

標高929mの御岳山山頂の霊山・武蔵御嶽神社
大人の仲間入りを祝う「御岳山元服式」

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元服式とは、奈良時代以降の武家社会で大人の仲間入りを祝福するために行われた儀式です。年齢は地域や時代によって異なり、おおよそ1215歳頃が対象です。御岳山の元服式では12〜18歳を対象としています。成人がかぶるとされている烏帽子を、宮司さんにかぶせてもらいます。

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武蔵御嶽神社は、紀元前に創建されたといわれる古社です。ここで行われている元服式は3月後半に開かれ、1218歳を対象とした事前申し込み制です。古式ゆかしい武家装束の直垂を着て宮司さんから侍烏帽子をかぶせてもらいます。「大人」への仲間入りをする際の節目として、「元服」をされ、新たなスタートを切るのも良いですね。

INFORMATION
武蔵御嶽神社
http://musashimitakejinja.jp/news/genpuku_r2/

氏神様やご先祖様、地元住民の方々との交流を通じてわが子の成長を祈る行事はいろいろとありますね。参加することによりご利益が期待できるうえに、良き思い出になります。2020年以降はコロナ渦の影響で、残念ながら多くの行事が中止となりました。2022年は無事に開催されることを祈りたいものです。

取材・文/今井美由紀(Neem Tree)

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