片付けとインテリアのプロに聞く! 子どものいる家庭の整理収納と部屋づくり
新生活が始まり、子ども部屋や子どもスペースに頭を悩ませているママやパパは少なくないのでは?
気づくと子どものモノでリビングがごちゃごちゃになっていたり、生活動線が定まらないために無駄な動きが多くなってしまっていたりと、子育て世代の住まいの悩みは絶えません。
整理収納アドバイザーでルームスタイリストの岡本あつみさんは、国分寺市にある築40年、約80㎡のマンションをリノベーションして、夫と3人の娘さんとともに家族5人で暮らしています。
そんな岡本さんに、家族みんなが心地よい部屋作りの秘訣について教えてもらいました。
1.家族みんなが快適なリビング&ダイニング
前の住人が残してくれたという、壁一面の本棚が印象的な岡村家のLDK。
ダイニングテーブルに座ると、背後の大きな本棚が、まるでブックカフェのようです。
そんなダイニングとリビングの空間を区切るのが、鉄製のハンドレイルです。
カフェから着想を得て、リノベーションの際に大工さんに取り付けてもらいました。
これがあることで、同じ空間であっても『食べるときは食べる』『くつろぐときはくつろぐ』というように、自然と生活にメリハリができました。
ほかにも、背の低いシェルフやソファを置くだけで、空間は区切れます。
天井と床をポールでつないで固定する突っ張りパーテーションも便利ですね。
◆家族みんなが集う場所
小学3年生のお子さんは、ランドセルを置いたら、一目散にここへやって来るそうです。
使う人によって空間を特定せず、『ダイニング=食べる』『リビング=くつろぐ』などと目的によって家全体を構成しています。
このためわが家には個室がなく、夫も長女や次女も、帰宅すると、自然とこの空間に集まります。
岡本家にとってリビングはくつろぐ場所だからこそ、お子さんのおもちゃや本もリビングの本棚にひとまとめに。
本棚の下段を子どものスペースにしました。
おもちゃはどうしてもごちゃついて見えるので、突っ張り棒につけたクロスで目隠しをしています。
また、ぬいぐるみや目隠しの中に収まらないおもちゃはかごの中に収納しています。
天然素材のものはかわいいですし、インテリアの邪魔をしないのでおすすめです。
おもちゃスペースの横には子どもたちの本がずらり
2.フリーアドレス制の勉強部屋
岡本家の住まい作りの特徴の1つに、あえて個人部屋を作らず、フリーアドレス制を導入している点があります。
家族が自然と集まる過ごしやすいリビングにしたかったので、娘3人にひとりずつ部屋を用意することは物理的に不可能でした。
そのときに、"用途別にすればいいんだ"と思いついて、使いたいときに使えるワークスペースを用意しました。
元は和室だった空間をリノベーションしています。
3人のお子さんたちは、それぞれ専用の本棚とチェストを持っている。
本棚には、教科書や参考書、ノートなどが並ぶ。
パパのオンラインミーティングや、岡本さんご自身も集中したいときにこの部屋を使うそうです。
うちは寝室も5人一緒なので、壁で区切られた空間といえばここだけ。
子どもたちがひとりになりたいとき、この部屋にこもることもあります。
3.空間を上手に利用するコツ
本棚の上に並ぶ絵や版画は、お子さんたちの作品です。
スペースも限られているので、私の審査を通った作品だけが額装して飾られます(笑)。
飾らなくても私も子どもも残しておきたい作品は、寝室の思い出ボックスに保管しています。
どんどん増えていく子どもの作品は、捨てるには忍びないし、かといってすべて取っておくわけにもいかず、悩ましいもの。
子どもたちが学校から作品を持ち帰って来ると、一度レンジの背面に展示するんです。
一週間ほどみんなで鑑賞して、その後どうするか決めます。
子どもも作ることが楽しくて、その過程で満足していたりするので、全部手元に置いておきたいとは言わないですね。
さりげなく本棚に立て掛けられたお子さんの作品。現代アートのよう。
インテリアとしてのマクラメ編みにはまり、マクラメ講師もしている岡本さん。
リビングの一角にマクラメコーナーを設け、好きな作品を飾りながら道具を収納しています。
子どもがいても、趣味のものや観葉植物を飾りたいですよね。
そんなときは、専用のコーナーを設けるのがおすすめです。
窓辺に植物を置くための台を用意したり、低めのシェルフの上にお気に入りのアイテムを飾ったり......。
ちょっとしたスペースでも、空間に目的を持たせることで、素敵なインテリアスペースになります。
玄関前の壁には、ランダムに飾られた家族写真。おしゃれなギャラリーのようなスペースです。
限られたスペースなので、大きいサイズだと飾り切れないですし、飾らないとしまわれたままになってしまうので、あえて小さいサイズで現像して、好きな額に入れて飾っています。
子どもたちもパパも、写真をじっくり眺めることがあるそう。
パパは、『このときはかわいかったなぁ』なんて言いながら(笑)。
毎日目にする場所なので、自然と会話も生まれます。
4.生活動線を意識した収納テク
収納のプロである岡本さんにとって、"使う場所に置く"というのは基本です。
家のどこで使うかをまずイメージし、さらに動線を考えながらモノの置き場を作ると効率的ですし、モノが散らかりにくくなり、デッドスペースもなくなります。
文房具類はLDKの窓際に収納用の棚を設置し、100円ショップや無印良品などの収納グッズを使って整理収納。
家族が最も長い時間を過ごす場所に置くことで、使うときにサッと手に取り、スムーズに片付けられます。
新鮮だったのは、書類をキッチンカウンターの下に収納していることでした。
私のテリトリーはキッチン周辺なので、書類も私の動く範囲に置いています。
調理の合間にもチェックでき、すべてここで完結するので、とても便利です。
無印良品のファイルボックスの上に置いたトレーは、これからチェックするものや、光熱費の明細など、近いうちに処分するものの仮置き場に。
時期が来たらすぐに対応できるので、不要な紙類が溜まることがありません。
今すぐ真似したいプロの技
続いて、岡本さん宅で実践している収納テクをご紹介します。
◆学校のプリントは冷蔵庫横で管理
3人お子さんがいると、無尽蔵に増えていく学校のプリント類。
岡本家では、お子さんごとにマグネットシール付きのバインダーを用意し、冷蔵庫の横に貼っていました。
直近のプリントから順番にはさんで管理しています。
ファイリングして、棚などにしまい込んでしまうと、気づいたらいらないプリントが山のようになっていたということが起こりがちですが、これならプリントが増えていく様子も一目瞭然なので、こまめに整理できます。
また、すぐ手に取れるようにしておくことで、子どもたちも自分のバインダーを持ち出して、それぞれプリントをチェックできて便利です。
バインダーを冷蔵庫の横に貼る理由は、この場所が、死角になるから。
日常的に目にしたいものは飾るし、そうでないものは隠すというのがわが家の収納の鉄則です。
ほかにもゲーム機のコントローラーはストラップが付いているので、テレビの背面にフックを取り付けてそこにかけたり、トイレのお掃除グッズもタンクの裏に収納したりと、視覚的にもストレスが溜まらないようにしています。
小さな違和感を見逃さずに修正いくことを積み重ねていくと、住まいが心地よい空間になっていくように思います。
シール付きのマグネットシートは、100円ショップなどで購入できる。
最近は、背面にマグネットが付いたバインダーも売っているそう。
◆お部屋をワンランクアップする収納グッズを選ぶ
アンティーク風の戸棚に並ぶ黒い背表紙の本は、洋書と思いきや、家族のアルバムでした。
無印良品のアルバムなんですけれど、廃盤になってしまい、今はもう買えなくなってしまいました。
アルバムってカラフルなものも多いのですが、モノトーンや、グレー、濃紺などシックな色味で統一すると、見た目にもスッキリして洗練されたイメージになるので、おすすめです。
◆ラベリングはわかりやすさを重視
玄関を入って左手に、家族全員の衣類を納めたウォークインクローゼットがあります。
洗濯した衣類はすべてここに持ってくればいいですし、衣替えの必要もないのでラクです。
家族それぞれのアイテムは、ラベリングした収納ボックスにきれいに収まっていました。
ラベリングは、わかりやすくイラストにしています。
おしゃれに見せたくて、英語表記でラベリングする方も多いと思いますが、子どものものや家族みんなで使うものであれば、やっぱりひらがなやイラスト、写真の方がわかりやすいですね。
わかりやすくすることが、子どもが自分で片付け、自分で動く収納の第一歩だと思います。
衣類はここに収納できるだけの量と決めているそう。新しい物を購入するときは1つ減らすのだとか。
空間を目的別に区切り、ワークスペースはフリーアドレス制にしている岡本家。
お子さんたちの会話もさぞかし弾んでいるのかと思いきや、
「会話のキャッチボールは、それほどしてくれないです。投げたっきりのこともあります(笑)。
でも、今日は機嫌がよくないなとか、ちょっと元気ないなとか、エネルギーが溢れているなとか。そんなちょっとした変化に気づきやすいというのはあるかもしれませんね」と、岡本さん。
「子どもには子ども部屋を」「子育て中はインテリアはガマン」......
そんな常識をくつがえす岡本さん宅の部屋づくりには、暮らしを楽しむヒントがいっぱいでした。
教えてくれた人
整理収納アドバイザー/ルームスタイリスト 岡本あつみさん
「『家が好きになる』お部屋作りとお片付け」をコンセプトに部屋づくりとお片付けをサポートする。
整理収納アドバイザー1級、ルームスタイリスト1級のほか、幼稚園教諭第1種や保育士、片づけ遊び指導士などの資格を持つ。
高校生から小学生までの3姉妹の母。
商業施設も自然もある、多摩地域の"ちょうどいい暮らし"が気に入っている。
撮影/矢部ひとみ 取材・文/羽田朋美(Neem Tree)