料理が苦手でも大丈夫!日野市豊田にある調味料ラボ・青木めぐみさんのがんばりすぎない食育

「幸せになりたくて始めたのに、家の中が殺伐としてしまったんです......」
娘のアレルギーをきっかけに無添加生活へ舵を切った青木さん。正解を探すあまり、家族との距離が少しずつ離れていったと言います。そこから立ち止まり、たどり着いたのが「まずは調味料から整える」という考え方でした。
料理が得意でなくても、完璧を目指さなくてもいい。そんなメッセージが詰まったお話です。
娘のアレルギーをきっかけに、食と向き合い始めた
――調味料ラボを始めたきっかけを教えてください。

4年ほど前、娘のアレルギーがきっかけでした。0歳で卵のアレルギーが発覚し、その後くるみのアレルギーもわかったんです。それまでは外食も好きで、コンビニごはんにもよく頼っていて、食に関してはあまり深く考えていませんでした。
娘に何を食べさせたらいいのか分からなくなって、まずは裏に書かれた食品表示を必ず見るようになりました。そうすると、「pH調整剤」など、聞き慣れない添加物の名前がずらりと並んでいることに気がついて......。恥ずかしながら、「何も知らずに食べていたんだな」と思いました。それから、食について真剣に考えるようになったんです。
――そこから無添加生活を始められたんですね。
はい。娘のために無添加生活に舵を切りました。ところがその選択が、家庭を殺伐とさせる原因となってしまいました。
たとえば、私がどんなに添加物の少ない食事を用意しても、夫が娘に菓子パンをあげてしまって喧嘩になってしまったこともあります。私としては「家族のためにがんばっているのに、どうして伝わらないんだろう」と、やるせない気持ちになってしまって......。
家の中には、次第にピリピリした空気が流れるようになりました。幸せになりたくて食卓を整えようとしたはずなのに、気づけば、その思いだけが空回りしているように感じていたんです。
――どのように考え方を切り替えていったんですか?
「このままでは家族が疲弊してしまう」と、藁にもすがる思いで、食に関する本を100冊くらい読みました。まるで二宮金次郎さんが薪を背負っているように、幼い娘をおんぶしながら、半年ほどかけてひたすら読み続けました。
そこで気がついたのが、多くの本で共通して「まずは調味料から整える」という考え方が語られていたこと。調味料だけに特化した本は多くありませんでしたが、立場の違う専門家の方々がみな、調味料に触れているのが印象に残りました。
「調味料を変えるだけなら、私にもできるかもしれない......」と思い、試しに調味料を1種類変えたら、おどろくほどおいしくなったんです。以前は、"チンジャオロース"のような「名前のある料理」を作らなきゃと思っていたんですが、良質なお塩なら、蒸し野菜に塩をふるだけでも、十分だと気づきました。いくつか塩を用意して、今日はどれにする?と子どもと一緒に選んでみるのも面白くて。気づけば、家族の反応も少しずつ変わっていきました。
スーパーで迷わない、調味料選びの基本

――実際に調味料を選ぼうと思っても、スーパーには種類がたくさんあって迷ってしまいます。
そうですよね。私も最初はそうでした。でもポイントはシンプルで、裏側のラベルを見ること。これに尽きるんです。たとえば醤油。選ぶポイントは、原材料が「丸大豆、小麦、塩」の3つだけでできているかどうかです。
私は以前、スーパーの棚にある43本の醤油の食品表示を全部チェックしてみたことがあるのですが、家族のために使いたいと思えるものは、わずか3本でした。伝統的な醤油は、じっくり1年ほどかけた醸造で、味わいも格段に違い、余計なものも不要です。手間暇がかかっている分、お値段は張りますが、味も香りも、はっきり違いが出ます。
値段が気になるかもしれませんが、醤油や塩を買うのは、せいぜい年に数回ほど。外食を1回だけお休みすれば、毎日のごはんがおいしくて身体に良いものになる。そう考えると、実はパフォーマンスが高い家計の投資なんです。
調味料を選ぶ時は、できるだけシンプルなものを選ぶのがポイントです。例えば味噌なら、「大豆、米(または麦)、塩」などの原料だけを使い、かつ「天然醸造」と書かれたものがいいですね。私は「味噌汁さえあれば、今日の栄養は花丸!」と思っているくらい、味噌に絶大な信頼を寄せているんです(笑)。味噌汁さえきちんと作れていれば、そこから良質な栄養素が自然と摂れる。味噌は調味料という側面もありますが、日本が誇るスーパーフード。ぜひこだわって欲しいですね。
100点を目指さない。80点を続けることが大切
――「ちゃんとやらなきゃ」と思うとほどに、苦しくなるママも多いと思います。
私もかつては「あれも添加物、これも身体に悪い」とピリピリしていた時期があるから、お気持ちが痛いほどわかります。完璧を目指すとどうしても苦しくなってしまいますよね。
よく「子どもの味覚の土台は3〜9歳で作られる」と言われますが、オーガニック食品ばかりを食べて育った子だって、きっと思春期になればハンバーガーチェーンにも行きますし、子ども同士の付き合いの中でジャンクなものも楽しむと思います。
でも、幼少期に調味料を通して「本来の味」を知っていれば、大人になって自分の体を大切にしようと思ったときに、またその味を思い出すようになると言われています。今はそのための種まきをしている時期。そう考えれば、少し肩の力を抜いて見守れる気がしますよね。
――忙しい毎日の中で、何か少しでも負担を減らすコツはありますか?
「すべての調味料を完璧に揃えよう」「外食はまったくしない」と、最初から100点を目指す必要はないと思います。最近外食の頻度が多いと感じるなら、まずは自宅で手軽に作れるミールキットを取り入れてみる。そこから少しずつ自炊へ......というように、一段階ずつステップアップしていけばいいんです。手間を一つかけることは、添加物を一つ減らすこと。80点を続けることが大切なのだと思います。
たとえば、子どもがウインナーやハムなどの加工品ばかり欲しがって、お肉やお魚をなかなか食べてくれない......というお悩みもよく聞きます。そんなときにおすすめなのが「手巻き寿司パーティ」です。響きが楽しいのでパーティ感が出るうえに、ぐっと添加物を少なく抑えられます。丁寧に選んだ醤油をつかっていたらなおさら気持ちが前向きになりますよね。
忙しいときは無理をせず、ママが笑顔でいられる範囲で。体に優しい食卓を1回でも増やしていけたら、それで十分ではないでしょうか。
子どもが自分で気づく「本当に欲しいもの」

――青木さんの活動では、料理教室ではなく「実験室」という言葉を使われているのが印象的です。
パパやママが「これは体に良くないからダメ!」と言うよりも、子どもが自分で見て、納得して気づく体験を大切にしたいなと思っています。
以前、調味料ラボで開催している「ジュース実験室」に、毎日メロンソーダを飲んでいる5歳のお子さんがいらっしゃいました。パパが「子どもが大好きだから」という理由で、1本300円もするメロンソーダを買っていたんです。安価なものは体に悪そう......というパパなりの愛情だったのですが、実験室で裏側のラベルを見たら、100円のメロンソーダと中身はほとんど同じでした。なんとなく安心したくて高い方を選んでいたけれど、本質的には変わらなかったんですね。
さらに、ジュースに含まれる砂糖の量を実際に見てもらったら、お子さんがびっくりした顔をして。「こんなに砂糖ばっかりのジュースはイヤだ。飲みたくない」と話してくれたんです。
そこで話を続けると、もしかしたらこの子が本当に欲しいのは、メロンの味じゃなくて、炭酸特有のシュワシュワ感なのかもしれないと気づきました。子どもにとっては、味よりも感覚のほうが楽しいことも多い。後日、その子に炭酸水をあげたら、それだけで満足するようになったと親御さんが教えてくれました。
――親が日頃から伝えているだけでは、なかなか子どもに響かないこともありますよね。

そうなんですよね。講座に来てくれるお母さんたちも、日頃から「ジュースはダメだよ」って言い続けているんです。みなさん本当にがんばっている。でも、子どもには響かない......。そこに私が登場して「先生も同じことを言っている」となると、「あ、ママが言っていることって正しかったんだ」って聞いてくれるようになるんです。
我が家の娘もそうですが、パパやママだけの力では限界があるように思います。テレビや先生、周りの大人の声が重なったときに、子どもはやっと動ける。だからこそ、即効性を求めるのではなく、ちょっとした声かけを続けることが、やっぱり大事なんだなと感じます。
――楽しみながら気づく。その「実験」の感覚は、おうちのキッチンでも取り入れられそうですか?
もちろんです!特別な道具も技術も要りません。私、実は今でも料理は苦手なんです(笑)。だからこそおすすめしたいのが、「タッパーで作る即席味噌汁」。タッパーに乾燥野菜と味噌、粉末出汁を混ぜて冷蔵庫にセットしておくだけ。翌朝、カップに入れてお湯を注げばおいしい味噌汁が完成します。
子どもに「味噌とき係」を任命して混ぜてもらうのも楽しいですよ。3種類くらいの味噌から「今日はどれがいい?」と選ばせてあげたり、乾燥野菜を気分に合わせて入れてもらったり。お手伝いというより、一緒に実験を楽しむ感覚ですね。


がんばらない選択が、毎日のごはんを支えてくれる
――ここまでお話を伺って、まずは調味料1つから変えてみたくなりました。
ぜひ!全部を一気に変えようとしなくて大丈夫です。まずは毎日使う醤油を1本、こだわって選んでみる。ハードルが低く感じるところから始めてもらえたらと思います。
私は、調味料を変えてから肌荒れしにくくなったり、体が軽くなったりと嬉しい変化がたくさんありました。何より、良い調味料を料理に使うと、少しの量でも味がピタッと決まる。あれこれ足さなくてもよくなって、料理がぐっとラクになるんです。それは、忙しいママにとって大きな味方になってくれるはずです。
――最後に、食の選択に悩む読者の方へメッセージをお願いします。
誰かと比べるのではなく、昨日の自分より一つ多く踏み出せたら、それだけで自分に花丸をあげてほしいなと思います。
結局のところ、ママの笑顔が一番。ストイックにがんばりすぎてイライラしてしまうくらいなら、力を抜いたって大丈夫です。調味料を味方につけて、ママがニコニコして、家族みんなで「おいしいね」って食べられること。それが何より大切だと思っています。
フードセレクトアドバイザー
青木めぐみ
https://merihari-gohan.com/
保有資格:食学調味料アドバイザー・ホールフードジュニアマイスター・発酵ライフアドバイザー等フードシナプス 代表
娘のアレルギーをきっかけに食の大切さに気付き、一念発起。体を作る食べ物、どう選ぶ?作り手さんを直接訪ねながら、心も体も大切にしたいママ向けに「笑顔の80点合格!めりはり食選び」を提案している。
取材・文:たまちっぷす編集部 熊澤 南