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東村⼭の絵本店「トロル」の店主に聞く、絵本の選び⽅とおすすめ作品

 

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絵本には、読むわずか数分の間に、⼦どもの好奇⼼や想像⼒を引き出し、親⼦の会話を広げる魅⼒があります。幼い時期はあっという間。限られた時間の中で、⼦どもと絵本を存分に楽しめたら素敵ですね。今回は、絵本屋「トロル」の店主・関本練さんに、絵本の魅⼒と⼦どもの成⻑に合わせた作品の選び⽅を教えてもらいました。

対象年齢にしばられないで!ただ、絵本の世界を楽しもう

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⻄武新宿線「東村⼭駅」から徒歩 3 分にある絵本店「トロル」。⼩さなお⼦さんと歩いていたら、引き込まれそうな外観です。店内には、3000 冊以上の絵本以外にも、世界各国の⺠族楽器や玩具などが並び、秘密基地のよう。
「絵本は、絵とほんのちょっとの⽂章で、異空間に連れていってくれるのが魅⼒ですね。⼩さなお⼦さんのためだけではなく、⼤⼈が⾃分⾃⾝のためにも楽しんでもらいたいですね」

絵本デビューは早い⽅がいい?乳児期に読んであげたい作品

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対象年齢にとらわれなくてもいいとはいえ、⼦どもの成⻑段階に合う作品を選びたいもの。絵本デビュー期におすすめの作品とは?
「絵本屋が⾔うのもなんですが、0歳の間はそんなに絵本を熱⼼に読み聞かせる必要はないですよ。もちろん、パパやママが楽しいと思うなら、読んであげるのは OK。その場合は、絵が真ん中にあって、シンプルな⾔葉の繰り返しが続く絵本がおすすめです」

絵本デビュー期におすすめの作品

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『いない いない ばあ』
(⽂:松⾕みよ⼦、絵:瀬川康男、刊:童⼼社)

1967 年刊⾏、累計 700 万部を突破しているロングセラー。
「『いないいない』のときには、中央に描かれた動物たちが⼿で⽬を隠していて、次のページをめくると『ばあ』で、⽬をぱっちりと開けた動物がまっすぐに⾒つめている展開の繰り返しです。やさしい⾊味の線画に、読み⼿の⼤⼈も癒されます」

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『ぺんぎんたいそう』
(作・絵:齋藤 槙、刊:福⾳館書店)

2 匹のペンギンが、ペンギンらしい動きで体操をする作品。
「⻩⾊の背景が⽬を引く、おしゃれでかわいい絵本です。『いきをすって〜』『くびをのばして〜』などの⾔葉に合わせて、ページの中央にいるペンギンの動きをマネしたくなるはず。この絵本の中の『ぺんぎんたいそう』は、保育園や幼稚園のお遊戯会や運動会でも⼈気があります」

語彙が増え、好奇⼼が増す未就学児は繰り返しの展開が楽しい!

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おしゃべりが上⼿になり、できることがどんどん増えていく未就学児期のおすすめとは?
「絵本は、なにかを学ぶために読むのではなく、読むことで⾃然と知識が⾝についていくもの。⽂字は少なめで、絵の世界からインスピレーションを得られる作品がいいですね。想像⼒をかきたててくれます」

未就学児におすすめの作品

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『たべたの だあれ』
(作・絵:五味太郎、刊:⽂化出版局)

動物たちの仲間のだれが、⾷べたのかを当てっこするクイズ形式のお話です。
「ページをめくるたびにおいしそうな⾷べ物が出てきて、それを⾷べた動物を探す流れの繰り返し。めくるたびに動物が増えていくので、⽬に⼊る情報がどんどん増えていく様⼦は、リズム遊びをしていてスピードを上げていくようなワクワク感が味わえます」

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『どんめくり』
(作:やぎたみこ、刊:ブロンズ新社)

ちょっぴり不思議でユーモアのある作品を多く⼿がけているのが、作者のやぎたみこさん。
「これは、ページの半分で上下を別々にめくれる、しかけ絵本です。下が丼の器、上はラーメンやカレーライス、猫やさぼてんまで登場します。上下の絵と⾔葉の組み合わせ⽅は、なんと 241 種類! へんてこりんで笑っちゃう、お気に⼊りの組み合わせがつくれます」

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『はなをくんくん』
(作:ルース・クラウス、絵:マーク・シーモント、訳:きじま はじめ、刊:福⾳館書店)

1967 年に⽇本で発売された、春の訪れを伝える世界の名作絵本です。
「静かに雪が降る真っ⽩な⼭の中で、くまや野ねずみ、りすなどの動物が冬眠をしています。⽬を覚まして、⿐をくんくん。その先には、⻩⾊い 1 輪の花が咲いているというお話の流れが美しい! 静から動への展開の最後にポッと出てくる⻩⾊の花。⼤⼈が読んでも⼼が弾む作品です」

ときにはひとりで開くのも楽しい!⼩学⽣になっても楽しめる絵本

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読み聞かせを繰り返すことで、絵本の内容を理解できる 4 歳頃から⼩学⽣になっても夢中になれる作品はたくさん。
「⽂字が読めるようになれば、⾃分ひとりで絵本を開いて楽しむこともできます。図書館や本屋さんへ⼀緒に⾏き、お⼦さんが好むものを選んであげましょう」

⼩学⽣になっても楽しめるおすすめ作品

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『ぼくがとぶ』
(作:佐々⽊マキ、刊:絵本館)

乗り物や⼯作好きなお⼦さんにおすすめしたい、絵本作家の佐々⽊マキさんの代表作です。
「佐々⽊マキさんの絵本と⾔えば、『やっぱりおおかみ』(福⾳館書店)など、ユニークでナンセンスな作品が魅⼒。空を⾶びたい! という気持ちを持った男の⼦が、⾃分でつくった⾶⾏機で失敗を繰り返しながらも⾶⾏をかなえる様⼦は、創作意欲がかきたてられます」

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『⽇本の川 たまがわ』
(作:村松昭、刊:偕成社)

多摩川について理解が深められる絵本がこちら。
「オオカミの姿をした神様と男の⼦が雲に乗って空から多摩川を追っていく⿃瞰図絵本です。⼭に注ぐ⾬からできた⽔源、奥多摩湖、⽻村の取⽔堰に⽟川上⽔、なじみの場所を上から眺めるのは楽しいものです。絵本を⾒てから、近所を散策すると新たな発⾒がありそうです」

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『やとのいえ』
(作:⼋尾慶次、刊:偕成社)

現在の多摩ニュータウン地域をモデルに古い⼀軒家を定点観測したお話です。
「明治時代の⼀軒家を中⼼に、時代の移り変わりを追っていきます。⻑い間、稲作や⻨作をして暮らす⽣活が続きました。昭和40年頃からは、⼟地の開発が進み、団地やマンションが⽴ち並ぶように。すっかり変わった現在にひそむ、昔の名残を探す探検に出かけてみるのもいいですね」



絵本を開けば、パッと広がる夢の世界。その世界からさまざまなことが感じとれます。短くてシンプルな世界だからこそ、受け取るものは⼈それぞれ。スマホのアプリや動画鑑賞では得られない、親⼦で楽しみを積み重ねていける、絵本の魅⼒を感じる時間を持てたらいいですね。

【information】
トロル
http://troll-ren.net

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トロル店主・関本練さん

取材・⽂/今井美由紀(Neem Tree)

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