学校での金融教育・家庭で親が教えるべきことは?
2022年4月に金融教育が高校で必修化されました。「学校でお金のことを学ぶの?」と思われた方も多いかもしれません。
この「金融教育」は、お金や金融商品のみならず、社会で生きていくために必要なお金に関する知識を身につけることが目的です。
そもそも、金融教育は2005年から始まっており、これまでも金融教育が組み込まれたプログラムが小学校低学年以上の学習指導要領に盛り込まれています。
今回は子どもの金融教育について、様々な視点から考えてみたいと思います。
金融リテラシー調査
金融広報中央委員会が18歳~79歳の人を対象に実施した「金融リテラシー調査 2019年」によると、日本ではこれまで学校で金融教育を受ける機会がなかった人は75.0%、家庭での機会がなかった人は62.3%にのぼるという数字がデータ化されています。
日本では金融教育が重視されてこなかったという結果を示しています。
金融トラブルの低年齢化
2022年4月1日から成年年齢が20歳から18歳に引き下げられ、18歳でクレジットカードやローンなどが契約できるようになりました。それにインターネットなどでの金融取引の普及も伴い、比較的簡単にローンやリボ払いが可能になったことで、金融トラブルの低年齢化が問題になっています。
このような金融トラブルを防ぐためにも、子どもたちに金融知識を早い段階で身に付けさせる必要があります。
時代変化に伴って求められる金融への意識
近年は低金利が続き、預貯金で資産をふやすことが難しくなっていることから、資産運用が必須となりつつあります。
このような背景からも、若いうちから金融リテラシー(金融や経済に関する知識や判断力)を身に着けるべきとの考えが浸透し、それまで各家庭に任されてきた金融教育を学校でも行う必要性が高まりました。
学校で教える「金融リテラシー」
学校での金融教育は、小学校~高校までの間に、社会科や生活科・道徳などの複数の教科にわたり組み込まれています。金融広報中央委員会が作成した「金融教育プログラム」 には、下記の4分野の指導方法が記載されています。
A.生活設計・家計管理に関する分野
資金管理と意思決定、貯蓄の意義と資産運用、生活設計、災害・病気などへの備えについての学習
B.金融や経済の仕組みに関する分野
お金や金融の働き、経済把握、経済変動と経済政策、経済社会の諸課題についての学習
C.消費生活・金融トラブル防止に関する分野
自立した消費者、金融トラブル・多重債務についての学習
D.キャリア教育に関する分野
働く意義と職業選択、生きる意欲と活力についての学習
たとえば、「A.生活設計・家計管理に関する分野」では、資金管理と意思決定する力を養うために、小学校2年生の道徳の授業の中で金銭の有益な使い方を学びます。
三匹の子ぶたが登場し、文房具を買いに行ったときの話。
子ぶたたちは、母から一人 100 円ずつのおこづかいをもらう。文房具を買いにお店に行くが、トンタは消しゴムをたくさん買い、ブンタはおいしそうなお菓子を買い、ノンタは鉛筆と消しゴムを買ってお釣りをもらう。
店から出てきた三人がそれぞれ買ってきたものを見せ合いしたとき、トンタとブンタはあっと叫んだ。
(『おこづかい』出典:「どうとく 2 みんな たのしく」平成18年度(東京書籍株式会社))
この物語は、おこづかいを好きなように全て使ってしまったトンタやブンタと、お金の使い方を考えたノンタを比較することで、「物を大切にし、より良い暮らしをすること」が学べます。
家庭での「おこづかいを通じた金融リテラシー」の育て方
学校だけでなく、家庭内でもおこづかいを通して「正しい金銭感覚」を養い、金融リテラシーを育てることができます。今回、いくつかのご家庭で「おこづかいについて」のアンケートにご協力いただきました。
おこづかいを通して子どもに学んでもらいたいこと
お金は使えば減る。貯めることも必要。お金を稼ぐのに、甘い話はない。ということが、おこづかいを渡すことで少しでも伝わっていることを期待。(12才のママ/Tさん)
おこづかい帳をつけ、お金の計算をすることで、無駄づかいという概念を知り、お金を大切に扱えるようになってほしい。(11才のパパ/T・Mさん)
目的を持っておこづかいをあげることで、お金やモノの流れとその仕組み、そして生きていく上で必要な知識・経験を、お子さまたちが少しずつ身に着けてくれるかもしれません。
こんなことが身についた!わが家のおこづかい
おこづかいを通して収支バランスに目覚めた
おこづかいをあげた当初は、明確に欲しいものが無く、お金を使うタイミングもわからず、ずっと貯めていたよう。最近になって、欲しいおもちゃやゲームなどを見つけると「自分のおこづかいで買う!」と言うように。
お金を使うと持っているお金が減る、ということを経験し"自分はこれが本当に欲しい?"と、一歩立ち止まって考えるように。(9才のママ/Y・Mさん)
目的別におこづかいを分けて管理
毎月千円ずつ渡し、使うお金・貯めるお金・感謝のお金(お祝い事のプレゼント)と、各自で目的別におこづかいを分けさせている。
貯めるお金には、毎月の残高の1%を利子としてプラスしてあげるというベネフィットをつけている。お金を理解し、様々な使い方があることを知ってもらうために、このシステムを導入。一生懸命おこづかいを貯めて、好きなおもちゃを自分で買えた時はプレゼントとしてもらう時以上の喜びがあったよう。(10才・7才のパパ/Y・Hさん)
ルールを決めておこづかい帳をつける!
現在中1なので月額1,000円をあげているが、学年が上がるごとに100円プラスされるというルールに。
お正月には月額×5ヶ月分の「おとしだま」を渡すことを親子で決めたことで、お金の動きを分かりやすくし、おこづかい帳をつける習慣が身に付いた。(13才のママ/T・Y)
おこづかいには「おこづかいを、何か月ためればこれが買える」「今月はこれを我慢して、あっちを買おう」など、お金について考えるだけでなく、買い物の優先順位や、本当に必要なのかを本人が考えるきっかけになりますね。
おこづかいを通じて収支のバランスやお金の使い方を学び、金融リテラシーを養っていきましょう。
子どもが金融を学ぶなら、大人も一緒に勉強しよう!
家庭内でお子さんの金融リテラシーを育てるには、親である大人にも金融知識が必要になります。近年では、金融機関でもセミナーやコラムなどで金融知識や金融商品に関する情報を発信しています。
多摩信用金庫が運営するご相談専門店舗『たましんすまいるプラザ』のホームページでは、「ここが知りたい!すまいるムービー」と題し、お金に関して親子で学べるコンテンツを用意しています。
お子さんがお金に向き合うきっかけに最適です。ぜひ親子で一緒に学んでみてはいかがでしょうか。
リンク先:https://www.tamashin.jp/smileplaza/mv/index.html
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取材・文/たまちっぷす編集部 萬代悦子