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宇宙と星空の専門家に聞いた!子どもと一緒に星空を見上げてみよう!

 

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夏休みは、旅先で満天の星空を楽しむご家庭も多いのではないでしょうか。
でも、わざわざ遠くに足を運ばなくては、星空って見られないものなの?

いいえ、そんなことはありません!
「旅先でなくても、星空観察をもっと気軽に親子で楽しんでほしい。」
そうお話ししてくださった、西東京を拠点に活動するあいプラネット代表・野田祥代さんに星空の魅力や観察方法について、お聞きしました。

子どもたちに、宇宙の神秘や、星空の魅力を伝えたい!
そんな思いから始まった活動

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さまざまな世代に向けて、宇宙に関するワークショップや、宇宙についての講演会を行っている野田さん。どのように活動は始まったのでしょうか。

三鷹市の国立天文台に勤務していたこともあり、子どもの通う保育園や学童の方から講話を頼まれて、宇宙についてお話ししたことが何度かありました。それがすごく楽しくて。その後も頼まれれば、お引き受けしていました。
そんな中、2012年に金環日食という、めずらしい現象がありました。ちょうど引っ越ししたばかりだったので、仲良くなるきっかけづくりのために、顔見知りのママたちに「日食観察用の特別な望遠鏡があるので、よかったら公園で一緒に見てみない?」と、ドキドキしながら誘いました。
声をかけたママから、他のママたちへ話が広がって、当日はたくさんの親子が集まり、さらには通りすがりのおじいちゃんやおばあちゃんたちまで合流し、大イベントに。その経験にしびれて、出張プラネタリウムを始めたことがきっかけです。その後、協力してくださる方々に出会い、段々と規模が大きくなり、本格的に活動を始めました。

(あいプラネット 代表・野田祥代さん、以下同)

宇宙の話を聞いたみなさんは、どんな反応をされますか。

講演会では、"宇宙空間に放たれた宇宙飛行士のおしっこがキラキラと美しい理由"など、ちょっと視点を変えた宇宙のワクワクする話を盛り込んでいます。すると、子どもだけでなく大人も、先生さえも同じ目線で驚き、"びっくり笑顔"になります!世界が広がることに喜びを感じて楽しそうにしているみなさんの姿を目のあたりにできることに、とても魅力を感じています。

はじめての星空観察 きっかけのつくり方

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親子で星空観察をしようと思ったとき、どんな声かけがあると子どもは興味を持つのでしょうか。
教えていただいた星空観察ポイントも、あわせてチェック!

◆身近な「月の話」から始めてみよう

月って、すごく不思議ですよね。あんなに大きなものが、毎日かたちを変えている。地球から月まで歩くと、どれくらいかかると思いますか。月までの距離は、およそ38万km。大人の足で休みなく歩いても、11年かかるんです。
そんな話をしながら空を見上げたり、月の模様について考えてみるのもいいですね。
何に見えるかは、人によって違っていい。ウサギである必要はまったくないし、国や人が違えばワニに見えたり、女の人に見えたりもします。そんなふうに、月をテーマに話を広げてみましょう。竹取物語のお話をしてもいいと思います。子どもにとって身近な話をきっかけにしてみてください。

◆人工衛星を探してみよう

ISS(国際宇宙ステーション)は約90分間で地球を1周します。さまざまなルートを周るので、みなさんが住んでいる地域の上空を通ることもあります。
いつ通るかは、『#きぼうを見よう』というサイトで確認できます。ISSは、明るい光がすーっとまっすぐ進むように見えます。実はそのISSには人が乗っていて、色んな国が協力してISSを作りました。そんなことを考えるだけでもおもしろいですよね。
ISSに限らず、人工衛星を見つけると、子どもだけでなく大人もよろこびます。よろこぶ大人を見て、子どももうれしくなるものです。

『#きぼうを見よう』
https://lookup.kibo.space/

◆子どもと楽しく、星空観察するためのポイント

①人工的な明かりを避ける
近くに人工の明かりがあると、星は一気に見えなくなってしまいます。家のそばから見るならカーテンを閉めたり、部屋の明かりを消したり、光を手でおおってみるなど、なるべく自分の目に人工の明かりが入らないように工夫すると、見える星の数がアップします。

②空の開けた場所を選ぶ
自宅で星空を楽しみ、もっとよく見たいと思ったら、近くの公園へ、さらに開けた空間を目指し、都立公園や街灯のない地域へ行くのもいいですね。機会があればおすすめなのが、街を離れて山に登ったり、船に乗って海に出ること。これまで見たこともないような、きらきら輝く星空を観察できるでしょう。

③夜空が暗くなってから見る
なるべく多くの星を見たいなら、星空を見上げるタイミングは、太陽が沈み、夜空がしっかりと暗くなったとき。夏は日が長いので、20時以降でしょうか。最も見やすいのは、街の明かりが消える真夜中の2時頃です。月明かりがなければ、なおよいでしょう。夏休みということで夜更かしが許されるならば、一度チャレンジしてもいいですね。

④安全を確保する
星空を見上げながら暗いなかを移動すると、足元がおろそかになりがちに。急に来る車に気づかない場合もあります。お子さんから決して目を離さないでください。子どもたちは、必ず信頼できる大人と星を見に行くようにしましょう。

⑤必要な持ち物を準備する
夏場は虫よけ対策、冬場は防寒対策が必須です。レジャーシートがあると、ごろんと寝転がりながら、のんびり眺められます。夜は暗いので、懐中電灯も持参しましょう。
懐中電灯は人工の明かりなので、人に向けないなどの配慮も忘れずに。赤フィルムを貼ると目に少しやさしい光に変わります。

夏の夜空で見える星ならびは?

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夏に見える星や流星群について教えてください。

①織姫と彦星でも有名!夏の大三角

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夏の大三角とは、夏の時期、空高く明るく光る3つの星でつくる大きな三角形のことです。
3つの星は、宵のころ高いところでひときわ明るく光る"こと座"のベガ、"わし座"のアルタイル、"はくちょう座"のデネブです。ベガとアルタイルは、七夕のお話でも有名な織姫と彦星。子どもにとって、身近な星たちではないでしょうか。

織姫星と地球の距離は約25光年。光の速さで25年かかる距離です。25年前に出発した輝きが、今日私たちのもとに届いています。つまり今見ている織姫の輝きは25年前のもので、17光年先の彦星の輝きは、17年前のものなのです。
さらに彦星と織姫の間には、15光年もの距離があります。
例えば、もし彦星がスマートフォンで織姫にラブコールをしても、届くのに15年もかかります。気が遠くなる会話ですよね(笑)。25年前、私たちは何をしていただろうか?大人はそんなことを考えながら、星との距離について調べてみると、もしかしたらお子さんが生まれた時に輝いた光が、今日届いているかもしれない。今日放たれた光は、何年か後の大切な人に届くかもしれない。そんな風に自然と、現在、過去、未来のことまで思いが巡っていきます。

②2023年の注目ポイント!お盆のころ、ペルセウス座流星群がピークに

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三大流星群の一つである"ペルセウス座流星群"の出現時期は、7月中旬~8月中旬。初めてチャレンジするなら、今年のおすすめは8月14日未明、あるいはその前後の日です。
流星(流れ星)とは、宇宙空間にあるチリの粒が、地球の大気と激しく衝突し、光を放つ現象のこと。
流星群は年間を通じていくつもあり、毎年特定の時期に現れます。ペルセウス座流星群は、なかでも1.2を争う流星の数とされます。 流星群は、夜空が十分に暗いなどの条件が良ければ、1時間あたり40個もの流星を見つけることも。
親子で何個見えたか、競いあってみるのも楽しいですね。

【流星群を見るときのポイント】 

・月明かり
星空と同じで、月が明るいと流星の光が隠れてしまうため、月が細いか、月が空に出ていない時の方が流星を確認しやすい

・方向
できるだけ広い空を見渡せるところで、空全体を眺めている方が、流星に出会うチャンスが増える

③この夏、見頃になる土星

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8月27日に土星は"衝(しょう)"になります。
衝とは、地球から見て太陽とちょうど反対側に惑星が位置すること。この時期は地球の夜側に明るい土星がありますから、今夏は観察のチャンスです。30日から31日未明にかけて、その土星の近くで丸い月も輝きます。

土星は肉眼で見ると小さな光の点ですが、天体望遠鏡を使えば環が見えます。
天文台や科学館などが開催する観望会に参加すると、(もちろん天候によりますが)大きな望遠鏡で立派な環や模様を見せてくれることでしょう。ぜひ本物がもつ迫力にふれてほしいと思います。
私も手作りの小さな天体望遠鏡(口径が4㎝)を持っていますが、慣れてくると条件の良い日には小さな土星の、これまた小さな環を見ることができます。自分の望遠鏡を使うときは、手ブレを起こすと対象の天体もブレてしまいますから、三脚を用意しましょう。

また、観察には慣れが必要ですので、見えなくても諦めず、何度かチャレンジしてみてください。昼間のうちにピント合わせなど扱い方の練習をするのも良いですね。ただし、絶対に太陽を直接見てはいけません。これは、たとえ肉眼であってもです。

年間を通して星空観察を楽しもう!

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星空鑑賞を楽しめるのは夏だけではありません。それぞれの季節のポイントについてお聞きしました。

●秋(9~11月)
秋は、"秋の夜長"といわれるように、夜の時間が日に日に長くなっていき、夏よりも長い時間星空を楽しめます。空気も段々と澄んでくることでしょう。
秋の星座の一等星は、一つフォーマルハウトだけ。"みなみのひとつ星"と言われています。

【秋に見える代表的星空 】
・秋の四辺形(アルフェラッツ、シェアト、マルカブ、アルゲニブ)
・フォーマルハウト
・木星(11月3日に衝となり冬にかけて見頃)
・オリオン座流星群(10月22日前後がピーク)

●冬(12~2月)
冬は、空気が乾燥し蒸気が少なく透明度が高いため、一年で最も星が綺麗に見える時期です。
冬至12月22日は一年で最も長い夜で、冬は長い間星空を楽しめます。
一等星が最も多く7つ出現(ベテルギウス、リゲル、シリウス、プロキオン、ポルックス、カペラ、アルデバラン)します。

【冬に見える代表的な星空】
・冬の大三角(ベテルギウス、シリウス、プロキオン)
・冬のダイヤモンド(ポルックス、カペラ、アルデバラン、リゲル、シリウス、プロキオン)
・オリオン座
・ふたご座流星群(12月14日ごろの観察が特におすすめ)

●春(3~5月)
春は、段々水蒸気や花粉などが増える時期ではありますが、とくに雨上がりのすっきりと晴れた日の夜などは、春の星空をおおいに楽しむことができるでしょう。
ひしゃくのような形に、7つの星がならぶ北斗七星もさがしやすい星ならびです。

【春に見える代表的な星空】
・春の大三角(デネボラ、アルクトゥルス、スピカ)
・春の大曲線(北斗七星→うしかい座のアルクトゥルス→おとめ座のスピカ)
・北斗七星

多摩地域でおすすめの星空観察スポット

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多摩地域で星空をみるなら、どこがおすすめでしょうか。

奥多摩湖などがよくあげられますね。まずは身近なところでも楽しんで欲しいです。行くのに億劫ではない場所がよいですね。ベランダや庭先から近所の公園へ、街灯のない田んぼや河原、川、山、海、など開けた空間や人工の明かりが少ないところを探してみてください。
お出かけの際には、星空を楽しむポイントでも触れたように、安全対策をしっかり行ってくださいね。
授業で星のことを習っても、やはり星を見た本物の経験がないとつまらない。見上げるタイミングが多ければ多いほど、変化にも気づくことができるので、自宅やお出かけの帰り道など、気軽に星空を楽しんでいただきたいです。

最後に、星空を楽しみたいパパやママにメッセージをお願いします。

パパやママも、ぜひ一緒に星空を楽しんでください。親がニコニコして一緒に見てくれると、子どもも安心して一緒に楽しめます。星座や宇宙にくわしくなくても大丈夫!お子さんと一緒になって、"不思議だね~"と共感するだけでいいんです。 
お子さんたちが大人になってふと星を見たとき、パパやママと一緒に星空を見た思い出が蘇ることがあるでしょう。親子で一緒に何かしたというのは、意外と心の深いところに残っているという話をよく耳にします。何年先も変わらず輝く星空なら、なおさらです。今では宇宙の話は、ネットや本などでも簡単に調べられます。お気に入りの話を見つけて、お子さんと一緒にワクワクしてみてください。


観測史上最も遠い星は、129億光年もかなたに見つかっているそうです。途方もないくらいに広く、無数の星が光り輝く宇宙には、おもしろくてワクワクするお話がいっぱい。
そんなお話と一緒に星空を眺めたなら、子どもも大人も目の前の星空に、俄然興味がわいてくることでしょう。
星空は、いつもそこにあり、年間を通して楽しめます。季節の移ろいを感じるように、気軽に星空を楽しんでみてください。

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教えてくれた人

あいプラネット代表/体験型リベラルアーツ™講座 "はてなアカデミー" エグゼクティブ/
やとっこ天文あそび代表

野田祥代さん

1971年生まれ。名古屋大学物理学科卒、同大学院終了、博士(理学)。
幼少時に父親と観た空と星に魅せられ、大学で宇宙物理学を専攻。自然科学研究機構国立天文台に勤務し天文学データアーカイブに携わる。
「つたえよう 宇宙のふしぎ 星のふしぎ 地球のふしぎ 命のふしぎ」を合言葉に、さまざまな世代に、宇宙についての講演会やワークショップを行う。0歳児からシニアまで状況や希望に合わせた内容をやさしくわかりやすく届けている。

▼あいプラネット
https://aiplanet-sky.net/
▼はてなアカデミー
https://hatena-info.peatix.com/

野田さんの著書はこちら!是非あわせてお読みください。

▼2023年・夏休みの本(緑陰図書)中学校の部にも選定された本

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『夜、寝る前に読みたい宇宙の話』(草思社)』著者/野田 祥代

▼子どもと星空を観察するときにおすすめの本

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『夜空をおもいっきり楽しむ図鑑』(ナツメ社) 監修/野田 祥代・ 富田 晃彦

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取材・文/加賀美明子(Neem Tree)

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