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命を守る地震対策から在宅避難の方法まで!子育て家庭の防災の疑問Q&A

 

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災害時の明暗を分けるのは、正しい防災の知識と備えです。
家族みんなの大切な命を守るために、私たちがすべきこととは?
子育て世帯のみなさんの質問にご回答いただく形で、アウトドア防災ガイドのあんどうりすさんにご回答いただきました。

大地震から命を守るために備えておきたい3つの対策

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Q.自宅の地震対策をまったくしていません。「これだけは必ず対策してほしい!」という防災対策を教えてください。

耐震化・家具の転倒防止・二次災害対策の3つです。

1.耐震化
家の耐震性がないと、生死を運に任せるしかないような状態になってしまいます。だからまずは、何よりも耐震性ですね。
耐震性が低い建物の場合は、耐震補強リフォームをおすすめします。賃貸の場合は、建築確認の交付日が1981年6月1日以降の『新耐震基準』のお部屋を借りるようにしてください。

2. 家具の転倒・落下防止
家具を固定するなど、転倒・落下防止対策が必要です。
でも、その前に東京消防庁が言っているのは、家具を減らすこと。
ウォークインクローゼットや、備え付けの家具に集中的に収納することで、生活空間にある家具を減らすことを推奨しています。そのためには、必然的にモノも減らす必要があるわけですが、例えば子どもの漫画や書籍などは電子化することも一つです。

次に行うのが、家具の配置の工夫です。寝室や子どもがいる場所、出入り口に倒れてくるものがないようにすることが重要です。その上で、家具を固定するなどの対策を行います。冷蔵庫は大きく移動する場合があるので、必ず固定してください。

マンションの10階以上は揺れ方が少し異なります。ゆっくりとした大きな揺れのとき、高層ビルの高層階は長時間にわたり大きく揺れます。
この場合、突っ張り棒だけでは不十分だということがわかってきているので、ストッパー式の器具を併用するなど、合わせ技を使いましょう。

忘れがちなのがテーブルの固定です。テーブルの脚にゲル状の粘着マットをつけて滑り止めにしてください。

3.二次災害対策

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二次災害とは、最初に起こった災害によって別の災害が発生することを言います。
地震の二次災害には余震、津波、地割れ、がけ崩れ、火災などがあります。

最も発生しやすいのは火災です。
東京都防災アプリの『地域危険度マップ』では、地図上で選択した場所や現在地の危険度を順位で示します。火災危険度もわかりますので、チェックしておきましょう。

◆津波から命を守るために

多摩地域に住んでいるから津波のことは知らなくてもいいということはありません。津波から避難するポイントは次の3つです。

1.揺れが大きい場合
2.津波警報が出ている場合
3.揺れが小さくても長い揺れが起こった場合

このうちの1つでも当てはまったら、警報が出ていなくても、ただちに高台へ避難しましょう。都内でも津波が予想されている場所や旅行に行ったときに対応できるようにお子さんに教えておいてください。

子育て家庭は在宅避難を目指す?
教えて!「在宅避難」という方法

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Q.最近、「在宅避難」という言葉をよく耳にします。子育て家庭にとって、どんなメリットがありますか。また、在宅避難のために準備しておくことも教えてください。

在宅避難とは、災害時、自宅に倒壊や浸水、土砂災害、火事で延焼するなどの危険性がない場合に、自宅で避難生活を送る方法です。
東京都の避難場所は数が不足しており、コロナ禍で、避難所以外の避難先として、内閣府がホテルや知人宅を挙げるなど、避難所以外で『難』を『避ける』避難の重要性が高まっています。

また、東京都は『東京とどまるマンション』という補助事業を行っており、災害による停電時でも自宅での生活を継続しやすいマンションの普及を図っています。
子育て家庭にとって、在宅避難にはメリットが多いです。自宅は子どもが慣れ親しんだ場所なので、楽ですよね。
コロナ禍で、避難所も昔みたいに雑魚寝ではなくなり、パーテーションで仕切ったりテントを貼ったりして生活空間やプライバシーにも配慮してもらえるようになりましたが、人口が密集している東京都では難しいです。
子連れでの避難所生活はよりストレスもかかるので、家にいられるのであれば、それが一番です。

ただし、在宅避難するためには以下の条件がそろっていることが重要です。

1.2次災害やハザード上のリスクがないこと
地震の後、火事や土砂災害のリスクは高まります。豪雨と同時に地震が発生することもあるので、ハザードマップで土地のリスクを知った上で、自宅にとどまることができるか検討します。

2.室内で在宅避難生活ができる状態であること
まず、家の耐震性があり、余震に耐えられること、次に家具等の転倒や移動のリスクがないことが必要になります。前述のような家の対策をあらかじめやっていることがとても重要です。

3.トイレ対策を行う
大きな地震の後は配管が壊れる場合があるので、断水していなくてもトイレの水を流すと、詰まりの原因になります。
また、水害で浸水した場合も使えなくなります。トイレが汚れてしまうと匂いが充満し、食事すらできなくなると言われています。
このため、災害時用の汚物処理袋を使用しましょう。匂いが気になるので、赤ちゃんのオムツの匂いを抑える袋を利用するなど、子育ての知恵が活躍します。

4.十分な備蓄がある
在宅避難中の人は、現時点では、物資の受け取りのため、避難所等に足を運ぶ必要があります。
マンションの高層階に暮らす人や、赤ちゃんがまだ小さい場合、子どもが多い場合には受け取りに行くのが容易ではありません。
また、在宅避難者は支援物資が届くのに時間がかかる場合があります。
このため、在宅避難では、備蓄は必須です。地震であれば水と食料を最低でも3日分、可能であれば1週間分を用意しておく必要があります。マンション上層階の場合は、エレベーターが使えないので、さらに多めの備蓄がおすすめです。
洪水の場合は、ハザードマップで浸水継続時間を調べ、それ以上の備蓄をします。農林水産省は、アレルギーがある場合は、入手できないことを考慮し、2週間分の備蓄を勧めています。

用意しておくべき防災グッズとは?

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Q.防災グッズは何をどれくらい用意した方がよいでしょうか。

防災グッズに何をどれくらい詰めるかは、在宅避難か否か、避難する場合はどこに避難するのかなど、状況によって変わってきます。
おすすめは、東京備蓄ナビです。3つの質問に答えるだけで、自分の家庭に合わせた備蓄品目と必要量のリストが表示されるので、便利ですよ。
津波や土砂災害など急速に状況が悪化する場合は、何も持たなくてもいいように、避難先となる親戚宅などに防災グッズや生活グッズを備蓄しておくことも大切です。

台風からの避難の場合、準備に時間があるので、多めの荷物を持つことも可能になります。
避難所では、子どもに食べやすいものがあるとは限らないので、飲み物と食べ物を一人ひとつは、最低限持って行くのが理想です。ただ、1日分となると水は3Lと言われているので、重くて大変です。散歩や山登りなどでお子さんが持って負担にならない水の重さを知っておくと災害時の対策が立てやすいです。

リュックは手が開くので避難時に適しています。これは講演会でもいつもお伝えしているのですが、アウトドアのテクニックで、揺らさないことと重心を上に上げることがリュックを軽く持つ基本です。下の方でだらーんと腰リュックにする背負い方しか知らないお子さんも多いので、普段から軽い背負い方を教えておいてあげてください。

このように、ケースバイケースで対応していただければと思います。

災害時に役立つアウトドアグッズは?

Q.キャンパー家族です。キャンプ用品で災害時に役立つアイテムを教えてください。

キャンプ用品はなんでも役立ちます。普段からキャンプに行っている方であれば、災害時、どんな道具も使いこなせるでしょう。キャンプの経験がない方が使う場合、以下のようなアウトドアグッズが役立ちます。

・アウトドア用レインウェア

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雨で体が濡れると、気過熱で体温が下がります。このとき、夏場でも洪水で浸水するなど低体温症で亡くなるケースがあるので、濡れないことが大事です。大雨でも耐えられる耐水圧が10,000mm以上あり、汗をかいても蒸れない透湿性のあるアウトドア用レインウェアが、日常使いにも快適です。
雨の日でも外遊びする園では、このレインウェアが制服がわりになっている所もあるくらいです。
いつも使っているからこそ、災害時でも濡れずに避難できるというもの。日常生活の中でもたくさん活用していただきたいですね。

・断熱マット

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テントで寝るときに寝袋の下に敷く断熱マットをご存知でしょうか。
断熱マット自体は、テントサイズのものから座布団サイズのものまでいろいろあります。暑いアスファルトの上に座ることもできますし、熱だけでなく、冷気を遮断してくれるので、普段は、オムツ替えシートや、遠足のレジャーマット、入学式の冷え対策などに大活躍です。

・防水バッグ

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1つあれば普段は子どもの水着いれに使えますし、衣類圧縮袋として、旅行にも便利です。匂いを抑えてくれるので、汚れ物入れにも使えます。
災害時はバケツ代わりに水を運んだり、洗濯をしたりすることもできます。


災害から大切な命を守るために大切なことの一つが、家を整えること。先送りにしていた不用品の処分に着手するときかもしれません。
今回、防災のプロに、家具の固定からアウトドアグッズの活用まで、重要な対策をたくさん教えていただきました。ぜひ、この新しい知識を、防災行動に活かしてくださいね。 

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教えてくれた人

アウトドア防災ガイド

あんどうりすさん

2003年より全国で講演活動を展開。楽しくてすぐに実践したくなる、毎日の生活を充実させるヒントがたくさんあると親達の口コミで全国に広まり、毎年の講演回数は100回以上。子育てグッズと防災グッズをイコールにしてしまうアウトドア流の実践的な内容が好評。

公式ホームページ「あんどうりすのゆるっとアウトドア防災」
防災マンガ
水害避難マンガ
災害時の乳児栄養マンガ

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https://tama-tips.jp/living/blog/44-kosodate-bousai-1.html

取材・文/羽田朋美(Neem Tree)

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