


解決のカギは相手の立場や意見を尊重すること!?ワーママの上手なコミュニケーション
子育てをしていると、子どもの体調不良などで、突発的に仕事を休まないといけないことがありますよね。子育てしながら働くには、周りの理解なしでは成り立ちません。実際に仕事をフォローした経験のある方の話を参考に、協力をお願いするときに配慮するとよいポイントを考えます。
仕方ないけれど・・・
と周りに不公平さを感じさせていませんか?
子育て中の仕事仲間の業務をフォローする方に、ご意見を伺いました。応援する声がある一方、厳しい声があるのも事実です。
私は未婚の子どものいない50代女性だが、今の時代、普通の生活水準を維持していくには独身、既婚者関係なくして働かなければ成り立たない。ましてやお子さんがいるご家庭は尚更。子どもに関わる急なお休みや早退はわざとではなく、きちんとした理由になると思う。大人でもあることなのだから。(既婚、子どものいない・50代女性)
子育てをしながら懸命に働いている人もいて、お願いをしなければならない環境に働きづらさを感じている人も多くいる。子育てに限らず、介護や体調不良で休むことに対しても、双方を思いやる社会になってほしい。子育て世帯への制度が手厚くなってきているが、フォローをする方への支援も充実するとよいと思う。(未婚、子どもあり・40代女性)
子どもを育てながら働くことに覚悟が足りないと思うことも。二つのことをするのだから大変なのは当たり前。仕事中の姿勢や周囲への配慮は必要。(既婚・子どもあり・40代女性)
子どもの急な病気、トラブル、イベントなどを口実に、仕事を押し付けられていると感じる時がある。子持ち優遇の職場だと特に子なし側が当たり前のように業務を負担せざるを得ない状況になっている。(既婚、子どものいない・20代女性)
自分自身が相手の立場になったとき、初めて気が付くこともあります。
都合があるのは、誰しもが同じ
2022年の東京都の調査で、都内で小学生までの子どもを育てている世帯のうち、共働きの割合は過去最多の66.7%になり、子育てをしながら働く共働き世帯が増えています。そのため子どもを育てながら働く男性や女性にとって、子育て世代ならではの制度が拡充する一方で、それをフォローする側の体制が整ってないことが問題となっています。
そのようなフォロー体制を企業や国が作っていくことが求められる一方で、一個人としては何ができるでしょうか。
大切なのは、仕事を引き受ける側の状況を考えること。
これまでフォローしたことがある方からは、「一方的に依頼されて戸惑った」「急な依頼で余裕がなくなってしまった」「引き受ける側にも都合があるのにと感じた」「業務を全て任されるのが大きな負担」といった声がありました。
焦ったときこそ落ち着いて
相手も自分も大切にしたコミュニケーションを実行しよう!
園や学校からの急なお迎えの依頼で、焦る気持ちから慌ただしくなりがちです。しかし、急な仕事を依頼された側も同じように突如増えてしまった仕事に戸惑っていることを忘れないことが大切です。
まずは、相手の立場を考えながら引継ぎをお願いする必要があります。そんなときにおすすめなコミュニケーション方法が、相手を尊重し、周囲の人とよりよい人間関係を築くための方法「アサーティブ・コミュニケーション」です。
「アサーティブコミュニケーション」を開発したアメリカの心理学者ジョセフ・ウォルピは、自己表現の方法は3つあると提唱しています。
3つのコミュニケーション
攻撃的タイプ(アグレッシブ型)
自分の主張を押し通すために相手を論破したり反論したりと攻撃的なコミュニケーション方法を指します。一方的な態度により、依頼する相手に不満を抱かせ、無理をさせすぎるなどしてストレスを感じさせてしまいます。
受け身タイプ(ノンアサーティブ型)
他所の主張を優先したり、自分を後回しにしたりしてしまうコミュニケーション方法です。いつも環境や周りに振り回されてしまうので、ストレスを感じてしまいます。
互いに尊重タイプ(アサーティブ型)
自分の考えや気持ちを正直に伝えつつ、相手を尊重しながら素直に受け止めようとするコミュニケーションです。お互いの主張が違っても、その中にお互いの合意点を見つけます。自分も相手もストレスが少なくなる方法です。
例えば、上司から定時前に急な仕事依頼をされたとします。相手の立場を考えず押し付ける、これは攻撃的タイプ。そして上司の命令だからと不満を飲み込み、相手の意見を受け入れるのが受け身タイプです。アサーティブとは、このどちらでもなく、相手も自分も大切にした自己表現の方法です。
丁寧に説明し、相手が断る選択肢も視野に入れる
円滑な仕事のお願い方法とは
仕事をお願いするときには、アサーティブ型のコミュニケーションを実践してみましょう。
【誠実】、【率直】、【対等】、【自己責任】の4つのポイントを意識します。
伝え方を変える!4つのポイント
<誠実>
相手と自分の意見が食い違ったとしても反論するのではなく誠意ある対応を行う。
<率直>
遠回しな表現をせず、相手に伝わりやすい言葉で正直に主張する。
<対等>
私には子どもがいるからなど、一方が優位になる関係ではなく、お互いが対等な立場であると考える。
<自己責任>
自分の発言や行動に責任を持ち、結果を相手のせいにしない。発言したことにも責任を持つが、発言しなったことにも責任を持つ。
4つのポイントを念頭に置いて、1.事実の描写をし、2.自分の考えを説明し、3.具体的な提案、4.相手が選択をできるようにコミュニケーションを取りましょう。
例えば、午後の会議での進行の役割が控えていたとします。しかしお子さんの発熱で、お迎えに行かなくてはならなくなりました。その場合の同僚へのお願い方法を考えてみます。
1.事実を描写する
まずは相手が話を聞いてくれそうな場所や時間を選ぶことも大切です。お迎えまでに時間がなく焦った状況であるとは思いますが、話しかけるタイミングも配慮しましょう。
「お忙しいところ失礼します。Aさんにご相談なのですが、今お時間よろしいでしょうか。実は、15時開始予定の会議で進行役を行う予定だったのですが、息子が発熱してしまい、夫は出張中のため、私が迎えに行かなければなりません。」
2.自分の考えを説明する
本来は自分の仕事なので、あくまでも相手の負担を最小限に留められる工夫をするとよいでしょう。
「Aさんも業務がありお忙しい中、急なお願いで大変申し訳ないのですが、進行を代わっていただくことは可能でしょうか。15時から1時間程度です。上司のBさんが同席予定で、フォローをお願いする予定です。資料はまとめてあり、伝えるポイントはこちらです。お迎えの後、病院に連れて行く予定ですが、急な質問等あるかと思いますので、電話に出られるように対応します。いかがでしょうか」
Aさんの返答
「私も本日は18時には出なくてはいけないので、申し訳ないですが対応できません」
3.具体的な提案をする
相手にも同じように立場や予定があり、断られることがあったとしても相手にも断る権利があることを理解し、受け入れてもらえるような選択肢を準備しておくとよいでしょう。
「18時退社の予定ですね。分かりました。一度対応方法を上司Bさんと相談したいので、本日Aさんの業務について教えていただけないでしょうか」
「何度もすみません。上司のBさんに確認を取りました。これからAさんが行う業務か、もしくは明日行う業務で私ができるものを引き受けて、明日、対応させていただくことはいかがでしょうか。明日は夫が休暇を取る、もしくは私が在宅勤務できるように調整します。急で申し訳ないですが、お願いできないでしょうか」
4.行動を選択する
ここで相手にいくつかの選択肢のなかから、選んでもらえるようにします。断られる選択肢もあります。
Aさん
「今日の私の業務を、明日ご協力いただけるのであれば、私も18時に退社ができるので、進行を代われます」
5.事後、お礼をしっかり伝えよう!
お願いをして引き受けていただいた後には、しっかり感謝の気持ちを伝えましょう。
「昨日は急なお願いにもかかわらず、ありがとうございました。本当に助かります。Aさんも、お困りの際にはご相談ください」
気持ちよく業務を代われた!みんなが実践している配慮とは?
子育て中の仕事仲間から気持ちよく仕事を受けた経験についてお伺いしました。
普段から仕事をきちんとされていたので印象がそもそもよかった。急な事態だったがきちんと引継ぎをし、翌日に『昨日はありがとうございました』と感謝の言葉をもらったので、気持ちよく業務を代われた。(既婚、子どものいない・20代女性)
まったくの丸投げではなかった。代行する上での準備や説明、サポートがあった。また電話やLINEなどで連絡しあえたため、困ったときも連絡ができて負担が少なかった。職場の体制にもよると思うが急な事態を想定して、仕事をする上で情報共有しやすい工夫や整理が大切だと思う。(未婚・40代女性)
代わるのが当たり前ではなく、負担をかけたと自覚していた。言葉の端々に、思いやりの言葉があった。困ったときは急な仕事を代わることを伝えてもらったことも平等性があってよかったと思う。(既婚、子どものいない・30代男性)
会社から手当が欲しい!という意見も
みんな決まった時間内でそれぞれの仕事を精一杯やっている中で、相手の仕事を頼まれるのだから、会社から手当があっていいと思う。(既婚、子どもあり・30代男性)
子育てをしていると、子どもの発熱やケガなど、急なお迎えで退社しなくてはならならないときはあるもの。慌ててしまい、仕事相手への配慮が欠けてしまうこともあるでしょう。そんなときこそ一呼吸置いて「もし逆の立場だったらどうする?」と考え、相手の立場に立ったお願いができるとよいですね。
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取材・文/加賀美明子(NeemTree)