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母と子は、細胞レベルでもつながっている?マイクロキメリズムという不思議な現象

 

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入園や入学、新しい環境が始まる4月。
これまで毎日のように手をつないでいた子どもが、少しずつ自分の足で歩き出します。背中が頼もしく見える一方で、「もうこんなに大きくなったんだな」と、ふと寂しさを感じる瞬間もあるのではないでしょうか。
そんな親子のつながりについて、医学の分野で興味深い研究が報告されています。
妊娠や出産をきっかけに、母親の体の中に子どもの細胞がほんのわずかに残ることがある.....。

今回は、「マイクロキメリズム」と呼ばれるこの現象についてご紹介します。
母と子のつながりをめぐる、少し不思議なお話です。

「マイクロキメリズム」って何?

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マイクロキメリズムとは、体の中に自分とは異なる細胞がごくわずかに残ることがある現象のこと。医学の分野で研究が進められているテーマの一つです。

この現象が注目されるようになった背景には、妊娠があります。妊娠中、母親と胎児は胎盤を通して栄養や酸素をやり取りしていますが、その過程で細胞もわずかに行き来することがあると考えられています。

そして、そのときに移動した細胞の一部が、出産後も体内に残ることがあると報告されています。子どもの細胞が母親の体で見つかったり、逆に母親の細胞が子どもの体内で確認されたりするケースもあり、妊娠によって母と子の体のあいだに細胞のやり取りが起きている可能性があると考えられています。

母と子の体は、私たちが想像する以上に密接に結びついているのかもしれません。

体の中に残った細胞は何をしているの?

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では、母親の体の中に残った細胞は、どんな働きをしているのでしょうか。
実は、この点についてはまだ分かっていないことも多く、研究が続いている段階です。
ただ、いくつかの研究では、次のような可能性が指摘されています。

・傷ついた組織の修復に関わる可能性
→体のどこかで組織が傷ついたとき、その修復を助ける働きをしているのではないかと考えられています。

・免疫の働きと関係している可能性
→体を守る免疫の仕組みに関わり、健康を保つ働きに影響しているのではないかという見方もあります。

もちろん、これらはまだ研究途上の段階で、はっきりと解明されているわけではありません。
一方で、妊娠中に母親の体へと移動した子どもの細胞が、その後も長い期間、体内に残ることがあるとする研究も報告されています。

そうした事実を知ると、少し想像が広がります。
たとえば、母親が体調を崩したときや、どこかをけがしたとき。まるでわが子からの小さな贈りもののように、体のどこかでその細胞がそっと働いてくれているのかもしれません。
子どもが巣立ち、離れて暮らすようになっても、体の中にはわが子のほんの小さな細胞が静かに残っているかもしれません。
そう考えると、親子のつながりは、完全にゼロになるわけではない.....。
感じ方は人それぞれですが、そんな見方もできます。

「マイクロキメリズム」が教えてくれること

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マイクロキメリズムの話を知ると、親子のつながりについて少し違った見方が生まれるかもしれません。

たとえば、子育ての中でイライラしてしまう日や、思うようにいかず気持ちがささくれ立つとき。そんなときに、ふと「体の中にはわが子の小さな細胞が残っていることもある」と思い出すと、少しだけ気持ちがやわらぐことも。

妊娠中、胎児の細胞は胎盤を通って母親の体へ移動するといわれています。こうした細胞は、出産だけでなく、流産などで妊娠の期間が短かった場合でも母体に残る可能性があるとする研究もあります。
そのことを知り、「あの子も確かにここにいたのだ」という思いが救いとなると話す人もいます。

今回、「マイクロキメリズム」という言葉を初めて知った方々に、感想をお聞きしました。

リアルボイス

細胞レベルでつながっているってこういうこと? 純粋に、おもしろいと思った(小5・小3のママ)

別の人間なのに、子どもがつらそうだと自分のことのように胸が痛くなることがある。これまでそこに理由なんて考えたことはなかったが、こういう細胞の話を聞くと、もしかしたら何かつながりがあるのかもしれないと思った(小4・小1のママ)

流産を経験しているが、この話を知って、亡くなった子の存在を少し近くに感じられた気がする(小2・5歳のママ)

母親の体に残った子どもの細胞が母の細胞修復の助けをしてくれるとか、健康のために働いてくれるとか、人間の体の神秘でしかない!(中3・小5・小3のママ)

漫画『はたらく細胞』でマイクロキメリズムをテーマにしたら、おもしろそう(中3・小3のママ)


科学的には、まだ解明されていないことも多いマイクロキメリズム。
それでも、母と子のあいだで細胞が行き来し、その一部が体の中に残り続けることがあるという事実は、親子のつながりをあらためて考えるきっかけになるかもしれません。

入園や入学など、新しい環境が始まる4月。
子どもは少しずつ、自分の世界へ歩き出していきます。

それでも、もしかしたら体のどこかには、わが子のほんの小さな細胞が静かに残っているのかもしれない......。そう思うと、子どもが少しずつ手を離れていくときも、どこかでつながっているような気がして、少しだけ心が軽くなる気がします。

取材・文/羽田朋美(NeemTree)

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