くらし Share

子どもの歯並びは「噛み方」で変わる?管理栄養士に聞く、今日からできる食事の工夫

 

tama-hanarabi-1.jpg

「歯並びは遺伝だけで決まる」と思っていませんか? 実は、毎日の食事や"噛み方"が、顎の発達や歯並びに大きく関係しています。
今回は、管理栄養士として約20年、栄養指導を中心に幅広く活動しながら「食べる力」を育てる支援に取り組む小池ゆきさんに、「噛む力」と「歯並び」の関係や家庭でできる工夫について伺いました。噛む力をつけるおやつレシピも必見です!

子どもの歯並びは離乳食期からの「噛む力」で決まる

tama-hanarabi-2.jpg

――そもそも歯並びは、どのようにつくられていくのでしょうか。


離乳期に適切なかかわりを通して鼻呼吸を身につけ、舌が本来あるべき位置に収まることで、歯が並ぶスペースが確保され、歯並びの土台が整っていきます。奥歯が生え始める2〜4歳頃がひとつの目安で、この時期までに基礎がつくられていきます。

――子どもの歯並びというのは、食事内容や食べ方とどの程度関係しているのでしょうか?


とても大きく関係しています。
私自身、保育園の立ち上げに関わった際に特に感じたのが、離乳食の重要性でした。
離乳食は単に栄養をとるためのものではなく、実は一生使う「噛む力=咀嚼の土台」をつくる時期でもあります。成長に合わない食形態の提供や環境では「丸飲み」の習慣につながってしまうこともあります。この時期にしっかり噛む経験を積むことで、顎の発達が促され、結果として歯並びにも影響していきます。
また、上唇の筋肉を使って食べ物を取り込む食べ方が重要で、口がぽかんと開いてしまうといった状態の予防にもつながります。
ただ、噛むという行為は無意識に行われるものです。大人でも「何回噛んでいますか」と聞かれても、正確に答えるのは難しいですよね。だからこそ、まだ習慣が身についていない子どもの時期に、自然に噛める力を育てていくことがとても大切だと感じています。

――離乳食期はだいぶ前に終わってしまいました。噛む力を強くするのはもう遅いですか?


個人差はありますが、顎の成長という意味では、10歳頃までは大きな伸びしろがあります。そのため、食事の工夫や日常の関わりによって、噛む力を育てていくことは十分に可能です。
ただし、無意識の習慣として定着させるという点では、できるだけ早い時期から取り組むことが望ましいといえます。

tama-hanarabi-3.jpg

「うちの子、噛む力が弱いかも?」と思ったら......

tama-hanarabi-4.jpg

――最近の子どもは噛む力が弱くなっているという話を耳にしますが、なぜでしょうか。

食べ物自体が全体的にやわらかくなっていることに加え、外で体を動かす機会の減少や、家庭環境の変化も影響していると感じます。たとえば、共働きなどで食事の時間が限られることで食べることに時間がかかる食材やメニューよりも子どもが好んで食べられる内容が増えたり、お子さんが一人で食事をとる機会が増えることで、噛むことを意識しにくい環境になっていることも考えられます。
また、「詰まらせたら怖い」という保護者の不安から、やわらかい食事を選びやすくなっていることも一因です。

――噛む力が弱いと、どのような影響があるのでしょうか。


口がぽかんと開いてしまうことで虫歯になりやすかったり、発音が不明瞭になるなど、口まわりの機能に影響が出やすくなります。さらに、噛むことは全身の力とも関係しているため、踏ん張りが効きにくいなど、体の使い方にも影響が及びます。
発音がはっきりしない、食べられるものが限られているといった様子は、一つのサインです。食材の硬さについていけず、新しい食べ物に挑戦しにくくなることで偏食につながる傾向も見られます。
また、早食いや丸飲みといった食べ方のクセが見られることがありますが、どちらも「噛めていない状態」です。顎の発達に影響するだけでなく、将来的には肥満につながる可能性もあります。食事中に水分で流し込む習慣も注意が必要です。噛まずに飲み込むクセがつきやすく、噛む回数が減ってしまうためです。

――わが子の噛む力が弱いと感じたとき、できることはありますか。


噛む力や口の機能は、成長の中で育っていくものです。日常の関わりや食事の工夫によって、無理なくサポートしていくことが大切です。
食事面では、キャベツやごぼう、きのこなど、繊維質があり"噛まざるを得ない食材"を取り入れるのがおすすめです。噛まないお子さんは、食べることが好きなお子さんに多く見られます。「噛もうね」という声かけと共に、お口の中が無くなったら次の一口、とする方法も有効です。
また、乳幼児は成長に合わせ段階的に慣らしていくことも重要です。

tama-hanarabi-5.jpg

◆小池ゆきさん直伝!噛む力をつけるおやつレシピ


噛む力を育てるには、毎日の積み重ねが大切。おやつの時間にも"噛む経験"を取り入れられる、小池さんおすすめのレシピをご紹介します。

ごぼうのかりんとう

tama-hanarabi-6.jpg

お麩スナック

tama-hanarabi-7.jpg

楽しい食事の時間が噛み方の習慣を育てる

tama-hanarabi-8.jpg

――噛む力を育てるために、意識したいことは?


まず大切なのは、姿勢を整えることです。体幹が安定するとしっかり力が入りやすくなり、結果として噛む力にもつながっていきます。
一方で、忙しさから食事が効率重視になりやすかったり、食卓での会話や共有の時間が減っていることも、噛む経験の積み重ねに影響していると考えられます。
だからこそ、保護者の方には、食事の時間を"共に楽しい時間"にすることを意識していただきたいですね。楽しい食卓は、自然と噛む習慣を育ててくれます。

――楽しい食事の時間をつくることで、子どもにはどのような変化がありますか。

食事の時間が安心できる場になることで、子どもの自己肯定感の土台が育っていきます。
また、食べることだけでなく、人との関わり方を学ぶ大切な時間にもなります。だからこそ、声かけも「あれ食べなさい、これ食べなさい」と指示するのではなく、「おいしいね」と一言添える程度で十分です。

――小学生のお子さんをもつ保護者の方へ、メッセージをお願いします。

毎日の食事づくりや声かけに追われて、食事の時間まで余裕をもつのは難しいですよね。私自身も、一人目の子が偏食で食も細く、「食事にどれだけ時間をかけたらいいのだろう」と悩み、親子ともに負担に感じてしまった時期がありました。

だからこそ、すべてを頑張ろうとしなくて大丈夫です。大切なのは、パパママができる範囲で食事を整えること。そして、食べるかどうかは子ども自身に任せる、という関わり方です。
食事の時間が「食べなさい」と指示される場ではなく、少しでも安心して過ごせる時間になると、子どもも自然と食べることに前向きになっていくのではないかと思います。

親子で栄養をとりながら、無理のない形で楽しく過ごす時間を重ねていくこと。それが、噛む力だけでなく、お子さんが安心して過ごせる日常や、人との関わり方を育てていくことにもつながっていくと思います。

tama-hanarabi-9.jpg

小池さんの息子さんが小さかった頃のお写真。偏食で食が細く、食事の時間が大変だと感じていた時期もあったそう。


大切なのは、特別なことをすることではなく、無理のない範囲で"噛む経験"を重ねていくこと。
そして何より、食事の時間を「楽しい」「安心できる」と感じられる場にしていくことです。
お話を伺う中で印象的だったのは、「きちんと食べさせなければ」と頑張ること以上に、親子で心地よく食卓を囲む時間そのものが、子どもの力を育てていくという視点でした。
その積み重ねが、噛む力だけでなく、子どもが前向きに食べる力や、健やかな成長、そして"自分はこれでいい"と思える感覚へと、ゆっくりつながっていくのだと感じます。

tama-hanarabi-10.jpg

教えてくれた人

管理栄養士/食物アレルギー分野管理栄養士
小池ゆきさん

小児分野を中心に、年間800件以上の栄養相談を行う。病院・保育園での勤務を経て、現在は栄養指導の傍らフリーランスとして離乳食支援に携わる。「噛む力を育てる離乳食」を軸に、離乳食・食物アレルギー対応に関する講座や研修、個別相談、監修などを実施。食べない悩みやアレルギーなど、子どもの食に関する不安に寄り添いながら、家庭と保育現場の双方を支援している。自身も子育ての中で食の悩みに直面した経験から、「制限ではなく、楽しむ食事」を大切にし、子どもの"食べる力"を育むサポートを行っている。

取材・文/羽田朋美(Neem Tree)

【関連記事】
管理栄養士さんに聞いてみた!エネルギーを補給して暑い夏を乗り切ろう!
「台所育児」のコツ・やり方は? 料理で子どもの成長を促そう!

Recommend おすすめ