睡眠時間から睡眠不足による影響まで~子どもの睡眠の疑問~
たまちっぷすの読者さんは、寝かしつけからは解放されたものの、「夜寝るのが遅い」「朝ボーッとしている」など、お子さんの睡眠不足や睡眠障害の悩みを抱えている方が少なくないのでは?
そこで今回は、寝具の企画開発をはじめ寝室提案と睡眠教育を行う株式会社エムールの経営企画室室長で睡眠改善インストラクターの沢田 裕さんに、子どもの眠りに関するさまざまな質問にお答えいただきました。
子どもは何時間寝るのが理想的?
大人よりも十分な睡眠時間が必要なことはわかりますが、そもそも子どもは何時間寝るべきなのでしょうか。
乳児期から17歳までの理想の睡眠時間
全米睡眠財団(The National Sleep Foundation)によると、新生児から生後3ヵ月くらいまでの赤ちゃんは14〜17時間、1歳未満の赤ちゃんは12〜15時間、1〜2歳頃までは11時間〜14時間と言われています。
3〜5歳の就学前のお子さんになると10〜13時間、6歳〜13歳では、9〜11時間必要ということです。
このあたりの年齢から、理想の睡眠時間の確保が難しくなってくるご家庭も多いのではないでしょうか。続く14〜17歳では、8〜10時間というのが理想となっています。
尚、午睡が必要な幼児期までは、午睡の時間も含めた時間としてください。
(株式会社エムール 沢田裕さん、以下同)
睡眠不足が子どもに与える影響
睡眠時間が短いと、どのような影響があるのでしょうか。
1.脳の機能の低下
これはお子さんに限った話ではありませんが、前頭連合野の機能が低下します。
その結果、具体的には論理的思考力や発想する力が低下します。また、注意力が散漫になったり、意欲が低下したり、情緒が不安定になったりします。イライラも、実は睡眠不足が原因だったりします。
脳への影響は、短時間で出やすいですね。大人でも、徹夜すると翌日のパフォーマンスに影響が出ます。
2.体内時計が乱れる
寝起きの気分が悪くなります。さらに、朝の食欲が低下します。
朝食は体内時計のシグナルになっていて、朝食を食べないと、朝が来たことを体が認識する手がかりを1つ失ってしまうんですね。
また、排便刺激がなくなるので便秘気味になってしまったり、活動量が低下したりします。その結果、夜の寝つきが悪くなるという悪循環に陥ってしまうことが考えられます。
3.さまざまな病気のリスクになる
お子さんですと少しイメージしづらいかもしれませんが、血圧が高くなりやすいです。
循環器系の疾患リスクが高まるというデータも出ています。免疫機能も低下するので、風邪をひきやすくなるなど、感染症リスクも高まります。
「寝る子は育つ」って本当?
睡眠が不足すると、身長が伸びにくくなるということを聞いたことがあります。
睡眠の重要な役割の1つに、体の休息があります。
入眠後、だんだん深い睡眠に入っていくわけですが、その前後に、代謝を調節して体を健康な状態に保つ成長ホルモンの分泌が最も盛んになります。成長ホルモンは細胞や骨といった体の組織の修復や再生に欠かせないホルモンですが、睡眠をしっかり取っていないと十分に分泌されません。このため、睡眠が不足すると身長が伸びにくくなると言えます。
やはり、お子さんの成長には質の良い睡眠が欠かせません。
もっと知りたい!睡眠のプロに聞く
子どもの快眠のためのQ&A
Q.寝起きの機嫌を良くするにはどうしたらいいですか?
A.
寝起きの機嫌が悪いときは、寝起きだけを治しても根本的な解決にはなりません。
単純に睡眠時間量が不足している場合もあれば、起床の時間が不安定で体内時計が乱れていることも考えられます。
お子さんに1日の様子をやさしく聞いて、どこで乱れてしまったのかを探り、そこから改善していきましょう。また、体内時計をリセットするには、朝、光を浴びることが効果的です。
朝が来たらカーテンを開けて、活動モードに切り替えてあげましょう。
Q.早く寝かせるにはどうしたらいいですか?
A.
私たちの体の中の温度(深部体温)は、夜9時頃をピークに段々と下がっていきます。体を休ませよう、寝かせようとするわけですね。
夜更かしをさせない、自然と早く寝つかせるためには、この自然な深部体温の低下を妨げないことが大切です。
例えば、入浴する時間に注意しましょう。ゆっくりとお風呂に入ると、皮膚体温(体の表面の温度)だけでなく深部体温も上がります。上がった体温は下がるまでに湯温や個人差はありますが、およそ90分かかると言われています。
ですから、寝かせたい時刻の90分前に入浴するのがおすすめです。
また、夕食の時間が遅いことが要因という場合が多々あります。遅い時間に食事をすると、胃腸は睡眠時まで消化吸収のために働くことになるので、脳や体は休まることなく、睡眠の質を落とします。
塾で帰宅が遅くなる場合は夕方塾に行く前にメインの食事を食べて、帰って来てから消化に良いものを軽く食べるなど、分食にするのもおすすめです。
一番問題になっているが、ゲームやスマホですね。ブルーライトの強い光は睡眠を促すメラトニンの分泌を抑制します。遅くとも、眠る30分〜1時間前には見るのをやめましょう。
Q.何歳から親子別々で寝たら良いでしょうか?
A.
6歳くらいまでは保護者と一緒に寝ていた方が認知的スキルが高まったという研究データもあり、一緒に寝ることでの安心感や、心が安定するというメリットが考えられるので、未就学児のうちは一緒に寝るという選択も1つだと思います。
一方で、お子さんの寝相が悪くて大人は身動きが取れなくなってしまう、途中で覚醒してしまうというと、健康によくありません。
できれば人数分の布団を敷いて、それぞれのスペースを確保しながら眠れるといいですね。
親子で「川の字」で寝る際にも、人数分のマットを敷くのがおすすめ 写真提供/エムール
Q.子どもの寝相が悪いです。正しい姿勢ってあるのでしょうか?
A.
お子さんは寝返りを打つ頻度が多かったり、回転したりしますよね。
寝返りには、布団の中の温度や湿度を調整したり、血液やリンパ液の循環を促したりする役割があります。ですからベッドから落ちないなど安全確保ができているのであれば、寝相が悪いことはまったく問題はありません。
Q.寝るときは何を着せたらいいのでしょうか?
A.
パジャマです。
寝ている間は体の表面から熱を放出して深部体温を下げていきます。また、夜間は暑くなくても汗をかきますので、通気性や吸水性、吸湿性にすぐれた素材のものを着る必要があります。パジャマに着替えることが入眠儀式になり、"そろそろ寝る時間"というサインにもなりますしね。
冬の時期は靴下を履かせた方がいいかという質問もありますが、深部体温を下げるために最も熱を発散させやすい部位が手足。靴下を履くと熱の放出を妨げてしまうので、なるべく素足で寝かせてください。
寒い場合は、お部屋の温度や寝具で調整しましょう。冷えが気になる方は、寝る前に蒸しタオルなどで手足を温めるのもおすすめです。
睡眠は、お子さんの心身の健やかな成長にとって欠かせません。また、子どもの頃に習慣化した睡眠リズムが、お子さんの未来の健康につながります。睡眠のプロ・沢田さんが教えてくれた快眠のコツを参考に、お子さんに正しい睡眠習慣をつけてあげましょう。
教えてくれた人
(株)エムール
経営企画室 室長
睡眠改善インストラクター
/睡眠健康指導士
沢田 裕さん
大学卒業後、人材派遣会社に就職し、業務設計や人材マネジメントに携わる。その後、組織コンサルティング会社に転職。コンサルタントとして活躍。同社の事業再建にも携わり、最年少役員となる。2015年9月に株式会社エムールに入社。「眠りで世界の人を元気にする」というビジョンのもと、人々の幸福と、心身ともに豊かな暮らしを提案している。
株式会社エムール:https://emoor.co.jp/
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取材・文/羽田朋美(Neem Tree)